特別賞 空木春宵『感傷ファンタスマゴリィ』
〈東京創元社〉

受賞の言葉

このたびはセンス・オブ・ジェンダー賞優秀賞という栄えある賞を賜り、誠にありがとうございます。装画を手がけてくださったmachinaさん、装丁の内海由さん、解説をお寄せいただいた高原英理さん、そして、著者校正のたびに真っ赤に染まるゲラにも辛抱強く付き合ってくださった担当編集の笠原さん、髙塚さんに、この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

ただし、一方で自身に対しては、「喜んでいる場合じゃないぞ」と言っておきたいです。現実問題としていまもあちこちで差別や分断、戦争や虐殺が起きている中、浮かれているわけにもいきません。小説というかたちを通して社会と対峙し続け、対話し続けることを怠らず、多様な性と生の表現が萎縮させられることのないよう、抗い続けたいと思います。

このたびの賞につきましても、己の眼差しや価値観の正しさなるものを常に疑い、自身の加害性や偏見や差別心を絶えず自らに問い続け、糺し続けていくための、新たな楔のひとつとして拝受したいと思います。

空木春宵