大賞
白川紺子『後宮の烏』全7巻
〈集英社オレンジ文庫〉
受賞の言葉
この度は、Sense of Gender賞という栄えある賞を賜りまして、光栄に思うとともにたいへん恐縮しております。
『後宮の烏』は取り立ててジェンダーという点を軸に据えた話ではないのですが、考えてみれば、「後宮」という明確に性的役割を求められる囲いのなかで、その役割から外れた少女が主人公です。そして性的行為を内心では厭う皇帝がいて、性を奪われた宦官たちがいます。
「取り立ててジェンダーという点を軸に据えた話ではない」と書きましたが、男女が恋愛関係とはべつの、正確に言うなら恋愛も友情も含んだ、けれどもそのどちらでもない、名前をつけがたい関係性を育んでゆく物語でした。
男女が登場すれば恋愛関係に発展するのを期待される向きがあることを、作家としても、読者としても感じますし、それについて考えさせられることもしばしばあります。私は恋愛ストーリーが大好きですが、そうでないストーリーも好きです。物語においても現実においても、人と人は恋愛関係になってもいいし、ならなくてもいい、恋愛とも友情ともつかない関係になるのもいい、その関係性に名前をつけずに、ゆるやかに存在できるような幅があってほしいと思います。
こうした関係性は読者に受け入れられるのだろうか、と不安にも思いましたが、シリーズ完結まで辿り着けたのは、ひとえに読者の皆様の支えがあってのことでした。
この度の賞をいただけたのも、支えてくださった皆様がたのおかげです。どうもありがとうございました。
白川紺子