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2012年度 第12回Sense of Gender賞生涯功労賞

生涯功労賞
萩尾望都『なのはな』及び全ての作品を讃えて
〈小学館〉

生涯功労賞 萩尾望都『なのはな』及び全ての作品を讃えて

受賞の言葉

このたび、ジェンダーSF研究会から、
生涯功労賞(Life Achievement Award)をいただきました。
驚いています。ありがとうございます。
いくつになってもご褒美をいただくのは、うれしいことです。

マンガを描き始めてからすぐ『私は恋愛ものがうまく描けない』のに気がつき、
『男の子を主人公にした方が、描いてて、すごく樂』と、気がつき、そうして、描きながら、『女であるということで、自分で自分に、縛りを掛けてきた』のに気がつき、
『この縛りはどこから培われたのか』と、ジェンダーの社会環境とジェンダーの歴史に興味を持ち、『この縛りは解けるのか』と、作品の中で『解く実験』をくりかえしてきました。その具体的な実験作が『マージナル』ですが、実験て、面白いものです。
それは未だ答えのでない世界の謎を解くようなこと、生き物の秘密を探るワクワクした冒険。未知との遭遇。『縛り』に気がついてからは、小説も歴史 書も新聞も評論も報道もこの『解く実験』を頭において読むので、物語の構造は二重三重になり、どこまでも空想と妄想が広がるクラクラしたおもしろさを手に 入れました。いちどジェンダーの謎に触れるとその奥深さに虜になってしまいます。
若い頃『女って、不自由。男に生まれたかった』と考えてましたが、ジェンダーの謎に気づいてからは、『なまじ男だったら社会的には男として満足に 暮らしてて、この秘境の存在自体に気がつかなかったかも』と、いまでは『良かった、女で』と、思っています。不自由であるということは、脳を活性化する。 これからも、世界の謎と生き物の秘密を探って行きたいと思っていました。

2011年3月11日の東日本震災は東日本とともに、私の頭も揺さぶりました。津波。地震。原発事故。テレビ、新聞、ネット、友人の話。今も、揺 さぶられています。取り返せないこの現実の中にも、世界の謎と秘密が二重構造に透けて見える。そんなわけで、透けて見えるものを、『なのはな』を始めとす る一連の作品で描きました。

SF感覚が好きな人、未知な事柄や謎、未来の世界に興味がある人は、やはり、現実に構築された世界が二重三重に透けて見える目線を持っているのだ ろうと思います。見えて苦しいこともあるかもしれませんが、そういうときは、孤独な『地球』と『時間』がわたしに共感を求めている、と考えることにしてい ます。
平たく言うと『神の試練』?

話があちこちに行ってすみません。まとまりませんが、
そういう仕事を応援して頂き、生涯功労賞(Life Achievement Award)をいただき、ありがとうございます。
『地球』と『時間』とコンタクトを取りながら、これからも『解く実験』を、続けて行きたいと思います。

2013-7-19 萩尾望都

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