少子化対策特別賞
村田沙耶香『殺人出産』
〈講談社〉
受賞の言葉
ずっと小説を書いてきて、最近、不思議な想像をするようになりました。
たとえば、人間が、今とは違う仕組みで繁殖してみたら。世界からセックスがなくなったら。キスを三人でしてみたら。
そういう実験の箱を小説の中に用意して、その中にヒトを入れてみることで、何か「大切なこと」を知ることができるような気がして、憑りつかれたように繰り返していました。
とにかく、その「大切なこと」が知りたいというただそれだけで書いてしまって、反省していました。それなのに、「少子化対策特別賞」という不思議な名前の賞を頂けたことに、とても驚きましたが、嬉しかったです。「知りたい」と想う気持ちを許容してもらえた気がしました。
これからも試行錯誤しながら、「大切なこと」にいつか辿りつきたいと願っています。本当にありがとうございました。
村田沙耶香