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2018年度 第18回Sense of Gender賞 大賞

大賞 田中兆子『徴産制』〈新潮社〉

受賞の言葉

『徴産制』は、男性が国家によって強制的に性転換させられ、妊娠を求められる話ですが、そもそもは「男性が女の子に変身するファンタジーに冷水ぶっかけてみたいなー」と思ったことがきっかけです。

男がある日突然女になってしまう、という話は昔から掃いて捨てるほどあります。で、だいたいみんなカワイイ女の子に変身して、最初に、おっぱいを見たりさわったりするんですよね。大ヒット映画『君の名は。』の主人公・立花瀧も胸を揉みまくってます。女性の私からすれば、なんで、普段あれほどこだわっているペニスを確認しないのかなと思うんですが。

『徴産制』では、そういった身体的な変化やそれに伴う精神的な変化だけでなく、これまでの歴史において、社会規範が(ときには国家が)女性にごく当たり前のように強要していた「美しくあれ」「セックスしろ」「子供を産め」といったことを、もし男性が強要されたら、果たして男性はどうするのか? どうなるのか? ということを、五人の男性主人公を通して考えてみました。

そして「セックスや出産を強制されることの理不尽さ、グロテスクさ」を伝えたかったのですが、書いていくうちに、自分のつくりあげた登場人物であるにもかかわらず、彼らが「男らしさ」を手放すことによって、より解放され、人と人とのよき関係を築き上げていくことに喜びを感じていきました。

『徴産制』の世界は、結婚する必要がなくなった社会です。だからこそ、人との関係、特に愛する人との関係をどう築いていくかは、生き方そのものになっていきます。パートナーがいてもいなくても、誰もが自分なりの幸福を見い出せる希望を書きました。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアと笙野頼子作品の大ファンとして、この賞を受賞しましたことを大変に光栄に思っております。
ありがとうございました。

田中兆子

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