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2011年度 第11回Sense of Gender賞

受賞作品

2011年度 第11回Sense of Gender賞発表

2011年度 第11回Sense of Gender賞は2012年7月7日日、第51回日本SF大会 Varicon2012(北海道夕張市・合宿の宿 ひまわり)にて発表されました。

  • 発表 第51回日本SF大会 Varicon2012(2012年7月8日 北海道夕張市・合宿の宿 ひまわり)
  • 賞状、トロフィー

2011年度 第11回Sense of Gender賞 最終選考作品

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第11回センス・オヴ・ジェンダー賞プレス・リリース

2001年度から始まったSense of Gender賞(センス・オブ・ジェンダー賞、以下SOG賞)ですが、今年で、第11回目を迎えることになりました。この賞は、アメリカのジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞と同様に、前年度の1月1日から12月31日まで1年間に刊行されたSF作品の中で、性差についての考えを深めていると考えられる作品を、「あなたのSF的ジェンダー考察はすばらしい」と褒めたたえるものです。

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞は、1991年に、アメリカの女性SF作家パット・マーフィーとカレン・ジョイ・ファウラーを発起人として設立されました。現在は、多くの女性SF作家・批評家・編集者とファンによって運営されており、毎年5月にウィスコンシン州マディソンで開催されているフェミニスト系SF大会「ウィスコン」にて、受賞式が行われています。わたしたちジェンダーSF研究会は、ティプトリー賞の主催者たちと連絡をとりあいながら、その日本における姉妹賞として SOG賞を立ち上げ、2001年から活動を行っています。

前年に引き続き候補作は、ソーシャルネットワークサービス「mixi」内の「ジェンダーSF研究会」コミュニティにて一般より候補作品を広く募集し、5月4日のSFセミナー合宿企画における公開討論を経て、後日ジェンダーSF研究会正会員による検討会を行い、5作品にしぼりこみました。

最終選考会は、去る6月17日に開催され、高世えり子(漫画家)、水島希(大学教員)、小川芳範(大学非常勤講師) 、福島一実(ジェンダーSF研究会会員、カフェ・サイファイティーク スタッフ) 、三五千波(ジェンダーSF研究会会員、漫画家)の各選考委員の方々にご参加いただき、白熱した議論を経て、決定いたしました。

今年は、大賞のほか、シスターフッド賞として二作品が選定されております。

シスターフッド賞は、センス・オブ・ジェンダー賞としては初めて設けた部門賞ですので、新規設立の経緯を、以下に記します。

シスターフッドとは、文字通りには、姉妹愛という意味ですが、修道女や同僚、同士、仲間といった意味合いもあり、広く女性たちの連帯という意味合いにおいて、フェミニズム運動とも深い関わりのあることばです。

本年の選考会では、従来書かれることがほとんどなかった女性像に焦点があてられた作品が多いのでは…という話題が出ました。そして、そのような、見えなかった(あるいは、既存の社会的評価では気がつかれなかった)女性像からみた社会や人間関係の中でも、女性と女性の関係性が、ありきたりのものとは異なった、しかしながらある意味深く重要な絆のようなものとして描きとられているのではないか、という議論が展開していきました。

今回の受賞作は――大賞も含めて――そうした女性の関係性を再考させるような思索があるのではないか、というのが選考会の帰着点です。そして、この、まだ名付け得ないトピックを、読者のみなさんにも汲み取ってもらいたい、そして考えてもらいたい、と願い、この新しい問題に触れていると考えられる二作品を、今までの話題賞や特別賞とは違う名で讃えようと、シスターフッド賞という名称がつけられました。

ここには、今回の受賞作がいみじくも描いているような、紅一点でもなくステレオタイプでもない女性像を通して、きっとこれからの女性同士の関係も、従来のものとはちがった側面をみせていくのではないか、というヴィジョンがあります。

これが今年だけの傾向なのか、それともなにかの始まりなのかは、まだわかりません。けれども、こういう議論の流れが出て来たということ自体が、重要ではないでしょうか。そこで、ジェンダーSF研究会は、選考委員会の結論を尊重し、今年新たにシスターフッド賞を設定した次第です。

各作品を、選考委員がどう読み、なぜこの結論に達したのか、ぜひ、対象作品とともに、選考委員の方々の講評をお読みいただき、一緒に考えていただきたいと思います。

今後も、性差という視点を介して、作品に新しい世界が見えてくることを、わたしたちは大いに期待しています。
本賞が、みなさまのジェンダー観に新しい視点を獲得する一助となれば幸いです。

(2011年度SOG賞幹事 ジェンダーSF研究会発起人代表 小谷真理)

最終選考委員の講評

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