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2006年度 第2回Sense of Gender賞 海外部門 候補作

マイケル・カニンガム『星々の生まれるところ』南条 竹則訳(集英社)
Michael Cunningham,Specimen Days

柏崎玲央奈(ジェンダーSF研究会会員、SFレビュアー)

 マイケル・カニンガムは、アメリカの現代文学作家だが、本書では、エンターテインメント性の高い、三つの形式の小説に挑戦している。第一話「機械の中」はホイットマンが生きていた時代を舞台にした幽霊譚、第二話「少年十字軍」は現代のサイコ・サスペンス仕立て、そして第三話「美しさのような」は、近未来を舞台としたSFである。
 第三話のあらすじを紹介しよう。主人公のサイモンは人造人間で、情動が高まるとホイットマンの詩が口をついて出るように設計されている。事件に巻き込まれたことをきっかけに、互いに惹かれ合うものを感じた異星人カタリーンと都会を逃げ出す。サイモンは六月二十一日に創造主である科学者の元へ帰るように予めプログラムされており、その地を目指す。途中で出会い、旅をともにすることになったのは、社会の犠牲者の見本のような少年ルーク。ようやく科学者の元にたどりついた三人は、彼が宇宙船でほかの惑星へ移住しようとしていることを知る。ルークは旅立つが、サイモンはカタリーンの死を看取ることを選択する。
 おもしろいのは、三話とも主要登場人物は、社会の犠牲者ルークという少年、社会と戦うキャサリンという女性、社会にがっちりと取り込まれた心優しく心弱きサイモンという男性の三人なのだ。まるで三題噺のようにウォルト・ホイットマンの詩、白い鉢、馬が必ず登場しつつ、少年と女性はそれぞれ旅立ち、男性は取り残されるというパターンが繰り返される。また、その視点は第一話は少年、第二話は女性、第三話は男性という風に転換していく。
 ジェンダー的に注目したいのは、キャサリンにほどこされたエイリアン性だ。第一話では売春婦、第二話では黒人、第三話ではまさに異星人というように、その時代・その社会背景で、異端とされるもの阻害されるものとして描かれる。三つの時代を比較することで、女性が社会の中でどのような位置づけがされているのかを浮き彫りにする。
 三つの話を比べてみると、SFという文学の特性がよりよくわかる。SFは未来を空想したもっとも荒唐無稽な小説であるにもかかわらず、もっとも抽象的な事柄をより具現化し際だたせて見せることができるのだ。
 読めば読むほどに新たな発見がある、この野心的な作品を海外部門大賞として推薦したいと思う。

2006年度 海外部門 最終選考作品と講評

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