大賞
粕谷知世『アマゾニア』
〈中央公論新社〉
受賞の言葉
このたびは、私の「アマゾニア」をセンス・オブ・ジェンダー賞に選んでいただき、ありがとうございました。
この作品、もともとは史実にもとづき、大航海時代のスペイン人征服者を主人公に書き始めたものです。「アステカ、インカの夢よ、ふたたび」とばかりに、美女と黄金と不老不死の泉があるという国を探しに出かけてアマゾネスを発見する話でした。征服者たちが残した手記を読むたびに「ファーストコンタクト」物のSFそのものだといつも思っていたので、その面白さを小説に移したかったのです。
それなのに、できあがった作品の主人公はアマゾネス戦士に変わっていました。古くは巴御前からリボンの騎士、それにベルバラのオスカルなど、凛々しい女戦士たちは、同時に激しい恋に身を焦がす女性でもありますが、この作品の主人公である赤弓は「男? 恋愛? なんじゃそりゃ」という性格のもちぬしです。
この賞をいただけたのは、この赤弓が主役をはり、作品をひっぱってくれたおかげだったのかなと、私自身は思っています。
最後になりましたが、長丁場となったこの小説の執筆に根気よくつきあってくださった中央公論新社の編集さん、そして選考委員のみなさまに感謝いたします。ありがとうございました。
粕谷知世