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2012年度 第12回Sense of Gender賞 大賞

大賞 須賀しのぶ『芙蓉千里』『北の舞姫 芙蓉千里II』『永遠の曠野 芙蓉千里III』(角川書店)

受賞の言葉

このたびは、栄誉ある賞を賜りまして、心より感謝申し上げます。拙著にはSF的要素がないような気がするので、本当に頂いていいのだろうか……と恐縮すると同時に、賞の主旨を拝見し、感激しております。
 私は十九年前にコバルト文庫でデビューをし、三年ほど前まで少女小説のジャンルで活動しておりました。執筆してきたものは主に、少女が閉じた世界から開けた世界に飛び出し、成長していく物語です。というとそれなりに何かを考えているようにも見えますが、単純に好みの舞台に少女を置いて好き放題書いてみた結果、なんだがビルドゥングスロマンっぽくなったかも! というのが現実に近いのではないかと思っております。
 そうした物語の主人公は、少年ではなく少女であってほしいという元来の好みもありますので、書くのはとても楽しかったのですが、じつのところ、拙著『芙蓉千里』は、そうした長年の嗜好・作風に決別するために執筆したものでした。
 主人公が開けた世界に飛び出すということは、否応なく男性社会に直面することも多いため、少女小説時代は読者層を配慮し、主人公は女性と言いながらも全くといっていいほど性を感じさせないように書く必要がありました。むろん無性であるからこそ、女の世界、男の世界を自由に行き来できるという利点はあり、それは昔から大河少女漫画などでよく使われてきた手法でありましたが、やはり主人公が次第に成熟してくると、厳しくなってまいります。少女小説であるからには、その時点でさっさと引きあげるのが妥当と言えばそうなのですが、書き手としては少々寂しいものがありました。
 それまで私は、恥ずかしながら、ジェンダーというものを意識することはほとんどありませんでした。が、少女小説を書いていくうちに疑問が生じ、葛藤するようになったといえるかもしれません。なんというか、いろいろと遅いです。
 そこで、少女レーベルではできなかったことを最後にやってみて、一度ケリをつけようと思って書いたのが、この作品でした。話の展開やキャラクター配置は、従来の作品とほぼ同じ。ただし、主人公は明確に女性とすること。性差から逃げないこと。男女だけではなく、女同士、男同士の関係もそれぞれ書くこと。そう決めておりました。もっとも、その試みは、私の力不足で、願ったとおりの形になったとは言いがたいのですが、それでも熱意と萌えだけはあらん限り注いでおり、その結果こうして思いがけぬ評価を頂いたということは望外の喜びであり、自分がやろうと思っていたことを汲み取っていただけたのかな、とおおいに励まされる思いです。
 これの喜びを糧に、いっそう楽しんでいただけるような作品を書けるよう、精進いたします。
 この作品に携わってくださった全ての方々に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました!

須賀しのぶ

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