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2002年度 第2回Sense of Gender賞 講評

永瀬唯(科学技術ジャーナリスト)

 『宇宙生命図鑑』の受賞、まったく文句ありません。読後、ちょっと思い出したのが、ブライアン・オールディスのPEST(惑星生態探査隊)シリーズ。地球人類に よる大規模再開発を大前提とした、つまりは公害や原発建設がらみで現在もよくある 結論が最初から決まってるチームの「探査」活動を扱ったもので、思い出したというのは翻訳のある「神様ごっこ」。扱いはも少しハードですが、種間の対立と同時に、ここでも種内の性差の問題が核となっています。ただし、「ジェンダー」となると、ちょと違うかな。『宇宙生命図鑑』における「女性」性の二律背反--「より自然に近く、弱弱しく、知性にもとぼしい」という決まり文句的差別構図の暴力的な逆転は見事。ただし、「暴力的で肉食で制御不能」という「男性」性へのクリシェもちょっとなあ、かな。

 で、推薦の佐藤哲也『妻の帝国』は、つまり、専業主婦がビッグ・ブラザーになるというポスト・モダン時代の『1984年』。スターリニズムやナチズムを「男性」 性の産物とする、これまたおなじみの決まり文句--クリシェへの嫌味ってのが根底にあるわけですが、「反理性」まで物語り中の「女性」性にかぶってるような誤読を誘発しかねないとこはちょっとね。で、物語りの根幹はそこにとどまらず、今なおすぐそこにある、根拠なきがゆえの独裁と虐殺の可能性に及んでるわけで、賞を逸した 点についての文句はございませんです。

 小林泰三『海を見る人』は傑作ぞろいの短編集だけど、「センス・オブ・ジェンダー」とはちょと違うのでは? 牧野修『傀儡后』はでっかい賞もとったことだし、本 賞にはさらにふさわしい作品が今後も期待されるので今回はパス。

 西澤保彦『両性具有迷宮』(双葉社)は実は未読。この人の作品、ジェンダーとのからみで言うと、ねらってるところがちょっとあからさますぎて、肌にあわないのであります。

最終選考委員の講評

2002年度 第2回Sense of Gender賞 最終選考委員の講評

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