いよいよ、Sense of Gender賞も創設されてから今年で三回目を迎えました。
この賞は、前年度の1月1日から12月31日までに刊行されたSF&ファンタジー関連作品を対象に、性的役割というテーマを探求し深めたものに与えられるものです。ひらたくいうと、「SF的にジェンダーについて深く考えさせる日本の作品を選び、あなたのSF的ジェンダー考察は、すばらしい」と、一方的ではありますが、褒め称えさ
せていただく賞です。
海外では、アメリカの女性SF作家パット・マーフィーとカレン・ジョイ・ファウラーが発起人となり、多くの女性SF作家&ファンが運営するジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞が、1991年に同様の趣旨で設立されています。
センス・オブ・ジェンダー賞は、ティプトリー賞の日本版です。両方とも正真正銘、ファンによる手作りをモットーとしています。
どのようにして、この賞が設立されたのでしょうか。
第7回目(1997)のティプトリー賞をBlack Wineで受賞し、翌第8回目(1998年)の選考委員になったカナダのSF作家キャンダス・ドーシイは、2000年にシカゴで開催されたCHICONのジャパン・パーティの席上、どんちゃん騒ぎのどまんなかで、日本から参加していた小谷真理に再会しました。いろいろな話がとびかうなかで、キャンダ
スは、「ティプトリー賞の贈呈式は、いろいろな場所でやっているけれど、そのうち日本でやったら?」と持ちかけたのです。
その話を日本へ持ち帰るさいに、小谷が日本でもティプトリー賞みたいなものがあればいいなあと夢見てそれを口にしたところ、「いいんじゃないの、ないんなら作っちゃえばー」と乗った柏崎玲央奈・工藤央奈とともに設立したのが、このセンス・オブ・ジェンダー賞と支援サークル「ジェンダーSF研究会」というわけなのです。
賞の名付け親は、俳句の達人でおたくの永瀬唯(ながせ・ただし)。そして設立前夜に来日したティプトリー賞の世話人デビー・ノトキンは話を聞いて、心から喜び、それを祝福しました。
本家のティプトリー賞は、初期のころには、選考委員五名が発起人と話し合って受賞作を選んでいました。最近では、選考委員五名が中心になって選考し、歴代の選考委員と受賞者、それに発起人と世話役など関係者で構成されるマザーボードがこれをバックアップしているようです。そして、性差論への理解を深め、一般への浸透をはかろうとしていたため、選考過程は、くわしい選評を伴い公開することが原則となっています。
日本のセンス・オブ・ジェンダー賞は、この方式を今年から試験的に導入しています。今年の選考委員は、風野春樹(サイコドクター)、柏崎玲央奈(幹事)、川崎賢子(文芸評論家)、島田喜美子(GATACON代表)、野田令子(理学博士)の五名で、やはりマザーボードがバックアップしています。
最終選考に先立つ五月のSFセミナーでは、さまざまなひとたちが参加して討議し、その議論反映した以下の四作が選ばれました。沖方丁『マルドゥック・スクランブル』、笙野頼子『水晶内制度』、古川日出男『トウンドトラック』、ゆうきりん『ヴァルキュリアの機甲』です。純文学からハードコアSF、ライトノベルから幻想小説まで、さまざまなジャンル境界を縦断してこれぞという力作がそろいぶみしました。また2003年度は、なんといっても評論の大豊作の年にあたっており、なかでも人気をあつめた野火ノビタ『大人は判ってくれない』が最後の候補作として入ることになりました。
SFやファンタジー作品という空想的な世界では、既存の男女といった単純な性 差に
二分化されない、自由な発想があります。そこではどのような作品がどういうふうに 描かれているのでしょうか。
今年のセンス・オブ・ジェンダー賞の候補作と選評を併読しながら、SF関連作品のなかに性差という視点を導入することによってどんな新しい世界が見えてくるのかを、ふたたびみなさんとともに探究していきたいと思います。
(ジェンダーSF研究会発起人・小谷真理)
8月21日
出演:高原英理、牧野修、小谷真理、夏一葉、尾山ノルマ |
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